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こんにちは、ライターの観音クリエイションです。うなだれながら失礼します。

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なぜうなだれているかというと、約半年前に35万円を投資した暗号資産の時価総額が、4月後半には300万円強にまで膨れ上がったのに結局1円も利益確定できず、みるみるうちに下がってしまって今や約80万円まで下落してしまったからです。ちくしょう!あのときに売っておけば......!

僕に限らず、今回のジェットコースターのような相場を前にどう振る舞えばいいのかわからなかったユーザーの方々も多いのではないでしょうか。今回の経験を無駄にせず、将来また上がったときに正しいアクションを取れるようになりたい。

そこで今回は、暗号資産の専門家にあれこれ質問してきました。5月から6月にかけての下落相場の理由や、下落相場のときにどのように構えるべきなのか、暗号資産の分析担当であるクリプトカレンシーアナリストの田中佑弥さんが答えてくれました。

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田中佑弥
クリプトカレンシーアナリスト、暗号資産事業部長。金融機関にて為替ディーラーや市場データ分析、金融商品のプライシングロジック構築などを経験。2017年より暗号資産業界で商品開発、プロジェクトマネジメント等多岐にわたる業務に携わる。

*この記事は、2021年6月21日の取材時の情報をもとに執筆した記事です。

5月上旬から6月中旬にかけての下落相場の背景

観音:田中さん、今日はよろしくお願いします。まず、2021年5月の相場について質問です。ビットコインは5月13日まで600万円台でしたが、その翌日には550万円、5月17日には480万円台、5月23日には360万円台と、10日間で40%以上下落してしまいました。ビットコインがここまで急落した要因を教えてください。

田中:今回の下落には、2つの要因があると考えています。まずひとつは5月13日のイーロン・マスク氏のツイート。

田中:こちらは米EV大手のテスラ社がビットコイン決済を停止したという主旨のものです。ビットコインのマイニング・取引で大量の電力を消費するのですが、発電には化石燃料が使われており、環境へ配慮したのが理由ですね。これを受けて、ビットコインは一時15%の急落となりました。

2つ目は、中国政府の取り締まりです。5月18日に中国の金融業界団体が「暗号資産に関する一連の取引や決済サービス禁止の取締強化を行う」と発表しました。中国人のビットコイン所有者も多いことから、この発表も市場に対してネガティブなインパクトを与え、下落に繋がったと考えられます。

観音:今回はビットコインだけでなくアルトコインも急落しましたが、この要因は何だと考えられますか?

田中:ビットコインの時価総額は暗号資産の中では最も大きく、また他のコインと強い相関を持っています。なので今回のような相場で、アルトコインがビットコインに引きずられて同じように下落するのは自然な動きと言えるでしょう。

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観音:なるほど。ちなみにイーロン・マスク氏のツイートに対して、イーサリアムは他のアルトコインと比べるとそこまで値段が下がりませんでした。これはなぜでしょうか?

田中:コンセンサスアルゴリズム*の違いだと考えられます。ビットコインはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)というアルゴリズムを使っているのですが、イーサリアムはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)というアルゴリズムに移行しようとしています。このPoSはPoWに比べて消費電力が少ないと言われているので、その背景がチャートに反映されたのではないかと考えられます。

*コンセンサスアルゴリズム:ブロックチェーン上での取引の「合意方法」を指し、その方法は様々。

下落相場下のユーザーの動きについて

観音:今回の急落の局面では、どんなアクションを取るユーザーが多かったのでしょうか?

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田中:グラフを添えて説明しますね。こちらは5月初旬から6月下旬までの期間の、ビットコインの売り買いの動向をグラフ化したものです。買いか売りかの割合によって色分けしていて、さらにそのトレードボリュームによって丸の大きさを変えています。縦軸が価格の推移で、横軸が時間。買い注文が多い場合はオレンジ色で、売り注文が多い場合は黄色い丸が打たれます。

観音:価格下落前の5月の頭は、600万円前後をウロウロしていたころから黄色が増えてる。つまりこの頃から、買い注文より売り注文のほうが多く出始めていたんですね。

田中:はい、その通りです。一部のユーザーの方々は下落が始まる前から売り注文を出していました。高騰したビットコインのポジション*を一旦解消しようとした心理だと考えられます。

*ポジション:利益確定前の評価損益が発生している状態の保有資産のこと。

観音:そして下落の最中に何度か戻ろうとするような、濃いオレンジ色の動きがあります。

田中:そうですね。よく「日本の投資家は逆張り*が好き」という話があるんですが、今回もそういったユーザーが買い注文を多く入れていたのかな、という印象を受けました。

*逆張り:価格が大きく下落しているときに買い、そこから上昇したときに売る、相場の動きの逆をとる投資手法のこと。

下落相場の中ではどう振る舞うべき?

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観音:ちなみに僕は昨年末に暗号資産を所有し始めてから、「売らずにひたすら持ち続ける」と決めていたのですが、この下落の最中はどう振る舞うのが正しいのかわからなくなってしまいました。結局持ち続けて下落の影響をモロに受けたのですが、どのように考えて、どんなアクションをとるべきだったのでしょうか?

田中:あらかじめ下落を予測できているのであれば、ポジションを落としてしまう、つまり現金に変えてしまうのがシンプルです。

観音:予測できていれば、そうですよね......。ちなみに、今回の急落を事前に予測していたユーザーはいましたか?

田中:先ほどのグラフでも、下落前の600万円台で売りを入れていた方が多くいらっしゃいました。「価格が落ち着いたのでそろそろ利益を確定しよう」と考えた可能性が高く、そういった方々は結果的に下落の被害をまぬがれています。そういう意味では「この辺で下がるんじゃないか」という予測を立てていたユーザーは、一定数いたのではと思います。

過去の急落とバブルの周期について

観音:今回のように、暗号資産の相場が急落したことってこれまでにありましたか?

田中:はい、何度かありました。多くのユーザーの記憶に残っているのは、2017年から2018年にかけて暗号資産相場全体が盛り上がって下落に転じた局面だと思います。他には2018年末や2020年の3月など、今回のように大きく下がったことは過去に何度かありますね。

観音:それぞれどんな理由で急落したのでしょうか。

田中:2018年は、いわゆるバブルに近かったのではと思います。アーリーアダプターが参入してからマジョリティ層が暗号資産を所有し始めたのがこの頃で、もともと相場全体が過熱気味だったところに、中国の規制が強まったのがトリガーとなって下落に転じました。

2020年3月は、コロナ感染拡大による株価暴落からリスクオフの流れとなり、ビットコインも暴落した可能性が高いです。ただ、暴落は必ずしも理由があって起こるわけでもないと思います。

観音:理由なく価格が下がることもあるんですか?

田中:ええ。暗号資産は株や為替や金などの相場に比べて、実経済に対しての繋がりが薄いので、チャートの形や相場の状況、人の気分などの影響を受けやすいんです。その割にデリバティブ*が組成されたり、価格変動が大きいという特徴があるので、ちょっとした下げ相場がロスカット*を巻き込んで、結果的に大きく下落する動きも見られます。

観音:なるほど。実経済では「バブルは10年に一度やってくる」と言われていますが、暗号資産にもそういった周期はあるのでしょうか?

田中:暗号資産はまだ投資対象としての歴史が浅いので、周期を予測するのは難しいところです。ただ、バブルを引き起こす要因の一つに、投資家心理が盛り上がるタイミングがあります。「みんなが買うから買う」という状況ですね。暗号資産もこういった背景が整った場合に、バブルが起こるのではと考えています。下がるときも同様で、2018年の急落はまさにそんな状況でした。

*デリバティブ:株式・債券・外国為替・暗号資産など、原資産となる金融商品をもとに派生した商品・取引のこと
*ロスカット:投資している資産の価格が下落して、上昇回復が見込めない場合、さらなる損失を防ぐために資産を売却すること

高騰した場合はどう振る舞うべき?

観音:逆に暗号資産が高騰したときは、どんなアクションをとるのが良いのでしょうか?

田中:一般的には流れに乗って取引をするのが安全と言われています。逆張りよりは順張り。つまり値段が上がっているときに買い注文を入れる、というアクションですね。

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観音:僕も含めてなのですが、高騰したときに「まだ上がるかもしれない」と、売却のタイミングが決められない人は多いと思います。そういうユーザーに向けて、何かアドバイスがあればお願いします。

田中:例えばチャートだけではなく、暗号資産に関わりの強い企業の動きや実需の流れなどの背景情報をいろいろ見たうえで、今がどういう状況か判断するのが重要かなと。先がわかりにくい状況であれば、すぐ抜けて待つ。つまり売却して、現金に変えてしまう判断を下すことも大事ですね。

観音:5月初旬から6月中旬の短期間だけを見ると急落相場ですが、年単位の長期的なチャートを見ると、ビットコインもアルトコインも右肩上がりのグラフを描いています。この理由はなんだと考えますか?

田中:各種金融機関がビットコインに対して徐々に取り扱いや緩和措置を進めてきたことが、相場に対してポジティブな影響を与え続けているように思います。これまでは「ビットコインは怪しいのでうちは扱いません」という姿勢だったのが、CME*でのビットコイン先物の取引量が機関投資家の参入により増えてきたり、ゴールドマンサックスがビットコインのトレーディングデスクを再開したりと、米大手金融機関が次々と暗号資産に対して積極的な動きを見せています。

*CME:シカゴ・マーカンタイル取引所。アメリカ合衆国のシカゴにある、世界最大のデリバティブ取引所

観音:なるほど、そうなんですね。

田中:また、暗号資産が決済に使われるなどの実需の動きも出てきています。今後もこの需要は増えていくと考えている投資家は多く、その思惑通りに世界が進めば、この先もビットコインを筆頭に暗号資産の価格は上がっていくでしょう。

観音:急落を恐れていたり、高騰に動揺したりしてしまう方に向けて、メッセージがあればお願いします。

田中:繰り返しになりますが、一つだけでなく、複数の情報を元にして包括的に相場を見ていくことが重要です。また、長期的な目線で考えることを心がけてください。1ヶ月、2ヶ月のスパンではなく、年単位での保有を心がければ狼狽したりパニック売りに走ったりすることなく、落ち着いた気持ちで相場と向き合うことができると思います。

6月下旬現在の市況は?

観音:本日(2021年6月21日)時点の、暗号資産市場の状況について教えてください。

田中:相場は軟調で難しい局面と言えます。というのも、ここ最近は暗号資産に関するニュースがあまり出ていないんですよね。

観音:確かに、イーロン・マスク氏のツイートで盛り上がっていた時期に比べると、良いニュースも悪いニュースも目にしなくなった気がします。

田中:そうですね。強いて言うならエルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用しようとしているニュースが流れたぐらいです。

観音:こういう時期の場合、初心者はどうすればいいでしょうか?

田中:現在のように、値動きが読みづらいときは手を出さないのもひとつの手です。ただ、こういった静かな状況がある程度続いた頃に、良いニュースが出て相場が大きく動き出すこともあります。そういった状況に備えて、アカウントを作成して入金だけしておいて、いつでもトレードを開始できるように準備しておくのが良いのではないでしょうか。

まとめ

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もともと、「リンク*を中心に持った暗号資産はずっと持ち続けるぞ」と決めていたのに急落を受けて「本当に持ってて大丈夫なのか......?35万円がゼロになっちゃうんじゃないか......?」と心配した1ヶ月でした。ですが、今回田中さんとお話ししてちょっと心が落ち着きました。

田中さんのアドバイス通り、1ヶ月2ヶ月の短いスパンで心をざわつかせることがないよう、初心にかえって長期的な目線で暗号資産の相場と向き合っていこうと思います。来年ぐらいには上がっていますように!

*リンク(LN)は取材時の暗号資産の名称です。2023年5月25日よりフィンシア(FNSA)へと変更になりました。
*この記事は、2021年6月21日の取材時の情報をもとに執筆した記事です。
*暗号資産の取引は自己の判断と責任で行ってください。
*暗号資産は需給の変動などにより価格が変動することがあり、損失が生ずるおそれもあります。
*撮影時にはスタッフはマスクを着用し、換気をしながら行っています。

取材・文/観音クリエイション
写真/橋本千尋
編集/株式会社LIG

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